2010年12月4日 連載10

「もりの家」の実験
「足るを知る」循環型生活

加子母には「いかそまい会」という妙な名称の会がある。

端材などの地域のエネルギー資源を「いかそう」と、循環型の地域づくりを目指し2008年に発足した。メンバーは工務店経営者や家畜農家ら30人。中津川市の「がんばる地域サポート事業」の事業認定も受けている。

徹底した「いかそまいか」の暮らしを実践している会員がいる、というので、訪ねてみた。05年、二渡地区の「もりのいえ」に住み始めた森本正則さん(49)だ。

築150年の古民家で、自然食の民宿や、手作りクッキーなどの自然良品店を営む。民宿では英国で始まったウーフ(WWOOF)と呼ぶスタイルも取り入れ、無料で滞在するかわりに、農場などで労働力を提供する宿泊客も受け入れる。年間の宿泊客の半数は外国人。

暖房はオーダーメイドの薪ストーブ、風呂はじか火たきホーローバスで、地元の製材所などから無料で分けてもらう端材や間伐材が燃料だ。ご飯を炊くときに時折使うのがぬかくど。もみ殻を燃料にするかまどである。

庭には、太陽との角度が直角になるように動く太陽光パネルを設置し、生活で使う電力を補う。飲食店からは使用後のてんぷら油を回収、手作りのろ過装置でこして車の燃料にする。家の脇には大きなタンクを3つ設けて雨水をため、水洗トイレや、畑の散水に用いる。水田や畑では、雑草の力をいかした自然農法でコメや野菜を栽培している。

生活を綴ったブログ「もりのいえ山暮らし日記」が自然志向の人の間で人気だ。

森本さんは大阪生まれ。大阪大学工学部を卒業して東京のビジネスコンサルティングの会社などに勤務して13年間、都会の生活を満喫。阪神大震災の折、現地で助け合う人々の姿を目撃したのをきっかけに「モノからココロへの転身」を決断して退職。

山梨県で無料の陶芸工房を聞いたり、山菜料理の達人の弟子入りをしたりしているときに、シェフをしていた理恵さん(36)と知り合って結婚。3か月ばかりオーストラリアやニュージーランドでウーフの宿泊客として滞在し、日本でどう生きるかを考えた。

帰国後、2人は「自然の中で自然に学び、自然体で暮らす」指針を作り、生活の拠点を探して各地を回った。たどり着いたのが加子母だった。

現地は幼児2人を抱える」4人家族。森本さんはイベントのプロデュースなどをして収入を補っている。

現代技術を生かしながら「足るを知る」暮らしを創造する情熱は尽きない。古い牛舎をリフォームして、電気、水、ガスを外から引かずに、自然エネルギーなどを利用してどこまで暮らせるか。そんな実験にも取り組み始めた。

この試みを、徐々に点から面へと広げる。それが「いかそまい会」の当面の目標だ。

 

特別編集委員 足立 則夫(62)