2010年12月25日 自転車取材を終えて

加子母には8月6日〜9月6日、10月22〜25日の計36日間滞在した。ログハウスを借り、毎日自炊し、自転車で取材して回った。強く印象に残ったのは2点
あいさつと親切の大切さを改めて知らされたのが第1。小、中学生と行き交うと「こんにちはー」と声をかけられた。そのうち言われる前にこちらから言おうとする競争心がわく。
道を歩く大人にも、こちらから声をかける。だれもがあいさつを返してくれる。気分爽快になった。加子母小学校の伊藤秀雄校長(54)にその話をすると、小、中学校では「目を見てあいさつしよう」と指導しているという。
親切な人が多いのにも驚いた。激しい雷雨に遭い、飲食店で雨宿りをしていたら、店主夫婦が自転車ごと車でログハウスまで送ってくれ、夕食のおかずまで包んでくれた。何度もそんな体験をしていると、だれか困っている人がいたら自分も率先して手を差し伸べようという気持ちが強くなる。
あいさつにも親切にも、強い心理的波及効果がある。多縁社会を作り出す重要な手段にもなっているんだな。
第2は元気な山村でも少子化、多死化がいや応なく進む厳しい現実だ。加子母の2010年(12月24日現在)の出生者は22人、死亡者は42人。国の統計で、出生者と死亡者が逆転したのは05年。加子母では1986年に逆転して多死社会に突入、過疎化が進んだ。
今、取り組むべきは少子化、多死化を前提にした社会の枠組みをいかに築くかだ。
若者の呼び込み装置を一歩進め、住んで働ける場の創出も大切になる。加子母では11年4月から中津川市の事業で、農業と林業に従事する都市の若者2名ずつを、地域おこし協力隊員として募集する。官民で実効のある若者雇用創出事業をさらに広げたい。
高齢者がずっと働き、趣味も楽しめる支援策を充実させる必要もある。
戸数千、高齢化率33%の加子母は実験のしやすい規模でもある。過疎化、高齢化に悩む全国の山村に示せるモデルを、この元気な山村がどのように築き上げるか。ずっと見守るつもりだ。

 

特別編集委員 足立 則夫(62)