2010年11月27日 連載9

外から来たミドル
里山の魅力 商いの核に

「道の駅加子母の駅長」。安藤直樹さん(36)が旧加子母村(現中津川市加子母)にやってきて、このポストに就いたのは2004年だ。当初7千万円だった年間の売上高は着実に伸び、09年度は1億800万円に達した。

安藤さんが腐心するのは、道の駅を地元の生産者や消費者と、いかに有機的に結びつけるか。例えば、食堂では、地元の特産物であるトマトや西方イモ、飛騨牛、ほう葉寿司などを使った多彩なメニューをそろえる。それを地元の人に知ってもらうために、津軽三味線の定期コンサートなども開く。

売店では地元の農産物だけでなく、それを使った加工品の無塩トマトジュースやトマトケチャップ、トマトが丸ごと入ったレトルトカレー、西方イモ入りレトルトカレーなどを開発して販売。野菜品評会と銘打ったイベントなどをたびたび企画、チラシも配って地元の人に知らせる。

外部との交流にも力を入れる。県内だけでなく青森県や新潟県、大分県などの道の駅18カ所ほどと相互の特産物の取引をしている。名古屋市区民祭りなどのイベントがあると加子母の特産物を車に積んで出かけてゆく。安藤さんの09年の出張は45日間に上った。

交流がきっかけになり、加子母の農家が青森県内のニンニク生産者からタネを譲ってもらって栽培。これを熟成させた加工食品、黒ニンニクを人気商品に育てるといった動きも出ている。

安藤さんは大分県佐伯市出身。広島大学大学院で植物生態学を専攻、広島市内のコンサルティング会社に入社した。環境アセスメントの仕事に従事。02年に退職し加子母の隣の下呂市で森林ガイドとして働いているうちに、加子母との縁ができたのだった。

10年4月には、組織を株式会社化して、男性2人を採用。社員3人、パート15人の陣客で「地域の活性化に貢献する道の駅」を探っている。

民宿しかなかった加子母に3組限定の隠れ宿「挽屋」を04年、小郷地区で開いたのは田口臣一さん(41)。やはり隣の下呂市から越してきた。

母親の実家である古民家を改装。1万平方メートルを超える敷地は、里山の風情を残す設計。水田や畑では自然農法で栽培しているので、ホタルやトンボがたくさん姿を見せる。食事は地元でとれた素材から作る薬膳料理。お客が来ると門を閉め、敷地内で里山の雰囲気を満喫してもらう。

臣一さんは下呂市で生まれ、福井大学で環境設計工学を学んだ。コンサルティング会社の大阪支店に勤務して退職。半年かけてニュージーランドやタイを回り、宿泊業の勉強をした。帰国後は3年半ほど造園会社で庭造りの修業を重ねた。ニュージーランドで知り合った理恵さん(42)と結婚し、2人で新しい宿づくりを研究。今はリピーターも増え、軌道に乗りつつある。

外から来た中年の元環境コンサルタントが、どんな活力をもたらすか。楽しみだ。

 

特別編集委員 足立 則夫(62)